為替的にも歴史的にも重要な一日となりました。イギリスがEU離脱の是非を問う国民投票を行い、離脱派が勝利しました。
今日の概要
今日まで様々な憶測や予想で乱高下を繰り返し、ポンドは対円で140円台にタッチすることもありましたが、日本時間で昨日の投票開始時点くらいでは残留派が優勢で、ドル円は106円台、ポンド円も160円まで上昇するなど残留派に楽観的な見方が広まっていました。
そして開票が始まり、しばらくは残留派が優勢だったものの離脱派が票を伸ばしてきて、いよいよマスコミや金融機関が離脱の可能性を現実的に捉えるようになりドル円は急落、1ドル100円を割りついに99円に到達、ポンド円は実に133円台にまで急速に動き約27円も円高になるなど”乱高下にも程がある”動きとなりました。
もちろん影響はドル円やポンド円、為替だけではなく世界の株式市場にも大きな影響を与えました(これを書いている今はニューヨーク株式市場に影響を与えている最中です)。日経平均は一時1300円も下げ、最終的に前日より1287円も下げで終了しました。
これから”未知の領域”に突入することになるイギリスですが、世界経済や為替市場にどのような影響を与えているのか、注意深く考慮する必要があります。
イギリス国内の動き
まず、スコットランドの独立運動が再び起こる可能性があります。スコットランド勢は残留派が多く、EU離脱を決めたイギリスと”違い”を示す機会になった可能性があります。EU参加を目指してイギリスから独立する、といったかたちです。
EU各国の動き
イタリアやスペイン、フランスなどでもEU離脱の活動が活発化する恐れもあります。政治的混乱が続けばユーロ安になることは容易く予想できます。
“離脱”に向けて
イギリスは明日からすぐにEUを離脱するわけではなく、今後2年をかけてEUサイドとどのような対応をしていくか交渉することになります。その中でどのような不安要素が出てきてどう解決するのかで通貨価値や市場に大きく影響を与え続けていくと思われます。
日本企業への影響
EU加盟国への貿易目的でイギリスを拠点として展開している企業は、今後イギリスがEUを離脱するにあたって拠点の存在自体を再考する必要が出てくる可能性があります。仮にフランスに拠点を移したとしても、今後フランスで同じようなことが起こらないとは限らないわけで(それを言い出すとキリがないですが…)、どのような対応をしていくかで株価に影響すると思われます。
日銀の対応
急激な円高を是正するための追加緩和や為替介入などへの警戒感(期待)が高まっています。明日、日銀・金融庁・財務省は今回の件の市場への影響に関し会合を行う見込みです。G7やG20で介入への釘をさされている日銀ですが、物価目標への達成のための政策をどのように打ち出してくるか注目する必要があります。とはいえ、今回は文字通り世界を巻き込む”事件”であったため、仮に日銀が対応したところでどの程度の影響が見込めるのか疑問視する声もあります。
アメリカについて
FOMCでもイギリスのEU離脱への懸念が話し合われ、早期利上げ観測が後退していたなかで実際に離脱する結果となったことにより、ますます早期利上げ観測は後退していると言えます。年内利上げは行われないとの見方もあります。
また、今回の一件はトランプ氏の大統領選の後押しになるとの意見もあります。「イギリスは国民が立ち上がり自由を得た」という考えがトランプ氏の考えに近いものがあり、アメリカ国民が影響を受ける可能性があると見られています。
来週以降は…
まだ”今日”は終わっていませんが、来週以降の動きも乱高下が続く可能性があります。各FX会社の規制も来週以降継続するところが多く、まだまだ予断は許さない状況です。1ドル100円を再び割ることは普通に想定されるべきであると思います。
次のポイントは、7月利上げの可能性がまだ残っていた状況が完全になくなったであろうFRBの動き、FOMCに注目したいと思います。ここではっきりと早期利上げの後退が観測されると、年末にずれ込むどころか年内利上げさえ行われないと思われるかも知れません。
世界経済が不安定な中でアメリカの経済は好調だとし、利上げを行えると思っていたところにけっきょく利上げできないとなると更なる世界経済への影響が十分に考えられます。
また、円高を是正できるのは米利上げしか無いと言われていた時もあったように、ドル円相場の方向性を決める上でも非常に重要な判断となるのは間違いありません。
為替取引とは
無理な取引はもちろんするべきではありません。来週以降、どういうスタイルでいこうか正直わからない状況です。こんなときは方向感の関係ないスキャルピングが良いのかも知れませんが、あまりにもボラティリティが高くリスクが大きいのも事実です(指標スキャルなどを得意とする人には最高の相場でしょう)。
とはいえチャート見ると取引したくなるのも事実…スイスフランショックの時もそうでしたが、いざ歴史的瞬間に立ち会った”瞬間”は実感はわかないもので、この乱高下を”チャンス”と捉え普段のルールを無視した無理な取引をしてしまいがちなので、しっかり意識したいと思います。結局のところ投資とは精神力の問題が大きいので…。
全ての投資に言えることですが、為替取引はマラソンと同じなので、自分のペースを崩すほど焦って走ってしまいレースから退場するなんてことにならないよう注意する必要があります。重要な経済指標の発表の時、動きの少ない横ばいの時、値動きが激しいニューヨーク時間、今回のような超乱高下相場…どんなスタイルであれ、(もちろん100%は無理ですが)「自分が勝てる相場」というの見つけて勝負することが大事だと思います。
関係ないですが、やっぱりイギリス人のスーツはカッコいいですね…
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